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大阪地方裁判所 平成11年(ワ)9401号 判決 2000年5月24日

第一事件=原告

大辻哲也

被告

郡拓也

第二事件=原告

三井海上火災保険株式会社

被告

大辻映三子

主文

一  被告郡は、原告哲也に対し、金四万五六六〇円及びこれに対する平成一〇年一一月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告哲也のその余の第一事件請求を棄却する。

三  被告映三子は、原告三井海上に対し、金一六万九〇五〇円及びこれに対する平成一〇年一二月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告三井海上のその余の第二事件請求を棄却する。

五  訴訟費用は、第一、第二事件を通じ、これを一〇分し、その三を被告郡及び原告三井海上の、その余を原告哲也及び被告映三子の負担とする。

六  この判決は、一、三項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  第一事件

被告郡は、原告哲也に対し、金一五万二二〇〇円及びこれに対する平成一〇年一一月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  第二事件

被告映三子は、原告三井海上に対し、金二四万一五〇〇円及びこれに対する平成一〇年一二月八日(保険金支払日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、次の交通事故による車両損害に関し、原告哲也が相手方車両の運転者である被告郡に対し民法七〇九条に基づき損害賠償を求めた事案(第一事件)と車両所有者である郡和久と自家用自動車総合保険(SAP)契約を締結している原告三井海上が相手方車両の運転者である被告映三子に対し保険代位に基づき支払保険金の求償を求めた事案(第二事件)である。

一  争いのない事実等(証拠により認定した事実については、証拠を掲記する。)

1(本件事故)

(一)  日時 平成一〇年一一月二六日午後一時二五分ころ

(二)  場所 大阪府東大阪市西石切町六丁目一番一〇号先国道一七〇号線上

(三)  大辻車両 被告映三子運転、原告哲也所有の普通乗用自動車(大阪五〇み九一〇二)

(四)  郡車両 被告郡運転の普通乗用自動車(和泉七七の三九九二)

(五)  態様 接触事故

2(大辻車両修理代) 一五万二二〇〇円(甲一五、一六、二〇の1ないし3、弁論の全趣旨)

3(保険代位)

(一)  本件保険契約(丙一)

郡車両の所有者である郡和久は、原告三井海上との間で、次のとおりの自家用自動車総合保険契約を締結した。

(1) 証券番号 第九一一三八四七八六三

(2) 契約日 平成一〇年一一月二日

(3) 保険種類 SAP(車両保険付)

(4) 保険者 原告三井海上

(5) 保険契約者 郡和久

(6) 被保険自動車 郡車両

(7) 保険期間 平成一〇年一一月二二日から平成一一年一一月二二日午後四時まで

(二)  郡車両修理代 二四万一五〇〇円(乙二、丙二)

(三)  保険金支払(丙三)

原告三井海上は、本件保険契約に基づき、平成一〇年一二月八日、郡和久に対し、郡車両修理代金相当額二四万一五〇〇円を支払った。

二  争点

事故態様・責任

1  原告哲也、被告映三子

(一) 大辻車両は、大型トラックの後方に停車していた。

(二) 被告映三子は、道を確認するため右のとおり停車したものであり、道路マップで前方のUターン路でUターンすることを確認し、右方向指示器を出し、後方の安全確認をしてから、ゆっくりと発進した。

(三) 大辻車両は、大型トラックの右側に出て、走行車線左端に少し車両の右側がかかる位置で前進し、大型トラックの前に出ようとした位置まで進んだところ、追越車線から斜めに走行車線を越えてきたと思われる郡車両が大辻車両の前方にかぶせた形で大辻車両に接触したものである。

2  被告郡、原告三井海上

側道左端に駐車中の大型トラックの直後に停車していた大辻車両の運転者である被告映三子が、右方向指示器を出すことなく、大辻車両を側道から走行車線(第一車線)に進入させ、走行車線を走行中であった被告郡運転の郡車両の前方に出て、その進路を妨害し、衝突回避のために右転把した郡車両の左側面(フロントドア後部方面よりリヤドア前部付近にかけて)に衝突させたものである。

第三判断

一  争点(事故態様・責任)

争いのない事実等1(本件事故)に証拠(甲二ないし一三、一五、一八の1ないし4、一九の1、2、乙一の1ないし3、二ないし四、丙二、被告映三子本人、被告郡本人)を総合すると、次の事実が認められる。

1  本件事故現場は、南北方向の片側三車線の道路であり(別紙図面参照)、北行車線(以下「本件道路」という。)は二車線の本線(大阪外環状線)の西側に一車線の側道(側道を北へゆくとUターン路となっており、南行車線に戻ってくることができる。)が設けられている。

2  被告郡は、郡車両を運転して、時速約六〇キロメートルで、本件道路の中央寄り車線を走行していたところ、前方を走行する大型トラックのために前方が見にくく、また、同車線が混んでいたことから左側車線に車線変更し本線を走行しようとしたところ、前方左側の側道に駐車中の大型トラックとそのすぐ後方に駐車していた大辻車両を発見したが、郡車両の通過を待つものと考えて、そのまま進行したが、大辻車両が徐々に右へハンドルを切って時速約五キロメートルで郡車両の進行車線に出てきたことから、大辻車両右前角付近から前輪にかけての部分が、郡車両の左側側面に衝突した。

3  被告映三子は、本件道路を北に向かい進行してきたが、道を間違ったことに気づき、地図で確認するため、本件道路の側道部分で大型トラックの後方に停車し、地図を確認し、後方から進行してくる車両はいないものと考え、側道へ進むために右にハンドルを切って発進したところ、本線の第一車線を進行してきた郡車両の進行車線に進出して、郡車両と衝突した。

なお、被告映三子は、衝突まで郡車両の存在に気づかなかった。

4  本件事故による大辻車両の損傷内容は、フロントバンパー右角付近及び右フロントフェンダー前付近擦過、右前輪擦過である。

5  本件事故による郡車両の損傷内容は、左側フロントドア凹損、左側フロントドアからリアドアにかけての擦過である。

以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

本件事故により大辻車両の右前輪が擦過していることからすると、衝突時点では大辻車両は右にハンドルを切った状態であったものであり、また、被告郡は、側道へ入るつもりも必要もなかったことからすると、原告哲也及び被告映三子が主張する、大辻車両が直進しているところに郡車両が右後方から進路前方へかぶせるように走行したために本件事故が発生したとは到底認めることはできず、本件事故は、主に被告映三子が本線を走行する車両の動静に十分注意することなく、停車状態から右にハンドルを切って本線の第一車線に進出した過失によって発生したものというべきである。

一方、被告郡も前方側道に停車している大辻車両が徐々に右へハンドルを切って時速約五キロメートルで郡車両の進行車線に出てきているのを認めていたのであるから、同車両の動静に注意し、適宜減速する等衝突を回避することが望まれたというべきであるのに、自車の通過を待つものと軽信した点に過失があるというべきである。

右に認定の一切の事情を考慮すると、本件事故における被告映三子と被告郡の過失割合は、七対三とするのが相当である。

二  したがって、本件において認容すべき損害額は、大辻車両の修理代一五万二二〇〇円の三割である四万五六六〇円、郡車両の修理代二四万一五〇〇円の七割である一六万九〇五〇円ということになる。

(裁判官 吉波佳希)

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